(遅い・・・・) 仕事は一時間前にようやく終わった。 けれどレノがまた帰って来ない。 コーヒーを忘れて帰ってしまったのか。そう思いつつもは頭のどこかでまさかの可能性を考えてしまう。 そして部屋を出てシャワールームに向かった。 ロッカールームにある細長い簡易椅子の上にレノのスーツが引っかかっていた。 レノ以外使用者はいないようで水音以外は静かだった。 男子用の為は多少抵抗感があるもののそのまま個人用シャワーの前まで来た。 「先輩?大丈夫ですか?」 当然曇りガラスの為中は見えない。 声をかけてから少し間を置き今度はノックしたが無反応。 ただただシャワーの音だけが聞こえた。 は一旦ロッカールームまで戻り常備されている大きなバスタオルを一枚掴んで再びノックする。 「・・・・失礼します」 ガラス戸を開ければ顔に雫を受けながら座り込んで寝ているレノがいた。 (やっぱり) シャワーを止めてはバスタオルを全裸のレノにかける。 「先輩、起きてください。先輩!」 肩を強めに揺すられようやくレノが目を開けた。 「・・・・ん?何してるんだお前」 「いつまでシャワーしてる気ですか。ホラ、起きてください」 はそれだけ言うとロッカールームに先に戻り水を用意した。 少ししてバスタオルを腰に巻いたレノが出てきたので水を渡す。 「気分が悪い」 「呑みすぎです。あと寝不足です」 「しんどい」 「早く服着ないと今度は風邪引きますよ」 「めんどい」 このまま放っておけば本当にこのままでいそうな気がしたのでは別のバスタオルを取りレノの頭に乗せた。 「なんだか、私の方が先輩みたいですね」 滅多に見れないレノの結んでいない髪を丁寧に拭くと濡れて一層鮮やかな髪がまるで血でも付着して染まったような錯覚になる。 「あとは自分でしてください。私もシャワーしてきます」 「おい」 隣の女性用に移動しようとしたは振り返ると楽しそうに自分の髪の先をつまんでいるレノの姿。 「お前の髪、俺が拭いてやってもいいぞ、と」 「け、結構です!」
22-06.2007 |