「マジで!?」 「あぁ」 噂は伝染するのが早い。おまけに一度広まると対処の仕様が無い。 つまり、お手上げ。 「なんで!?」 「フラれた」 「えー!?」 先程から水谷は驚いてばかりいた。 阿部とが別れたと聞き本人に確認するとこのザマ。 ベンチで練習の準備をしていた部員も内心水谷のガッツを褒めつつも阿部があっさり答えた部分に恐怖していた。 (絶対後でシゴかれるな、水谷) 「阿部、女の子はだけじゃないからな!」 「はぁ?」 「お前のそういう無愛想な所も言葉足らずな所も怒りっぽい所も全部好きだって言ってくれる女の子はいるって!」 肩を捕まれ身体を揺らされると阿部も流石に引いたのか「あぁ」とまた返事をした。 「よし、阿部の為にも次も勝てるように練習するぞ。三橋!」 「う、うん!俺頑張る、よ!」 準備の整った二人は先にグラウンドへと出、田島達も後を追う。 「でも本当だったんだな、てっきり冗談だと思ってたけど」 花井の目から見ても阿部もも昨日まで普段通り。 それは阿部も同じだった。 「もしかして、野球ばっかやっててフラれた、とかか?」 阿部は三橋の背中をぼんやり眺めたまま。 「そうだな、俺が間違ってた」 ついてくる、と。 応援してくれる、と。 「私より三橋くん大事にしてあげなよ」 野球を選んだ阿部をは責めもせず、嘆きもせず、ただ終わった。 「でも俺はこんな性格だから仕方ないだろ」 これ以上はを大切に出来無い。 それで駄目なら、俺達はもう駄目だ。
09-06.2008 |