檜佐木はの頬に触れる。 それでもは微動だにしない。 ただ檜佐木を見上げて黙る。 指を動かして輪郭をなぞっても、は瞬き一つしない。 「それ以上望んだりしない。約束する」 空いていた手で檜佐木はの左手に触れ薬指の指輪を外そうと力を込めた。 「ここまで来たらもう同じじゃない」 ようやくその表情を和らげたは檜佐木の行為を止めて自分で指輪を外した。 「守ってくれなきゃやだから、ね」 「わかってるよ」 夜の帳が下りて二人を隠す。 澱んだ時間に叩き落す。 容赦なく。果てしなく。 やがて言葉も消えて深く眠る。
11-06.2007 |