「ねぇ」

「んー?」

「お願いがあるんだけど」

「どないしたんや?珍しい」

俺は読んどった雑誌を閉じて向かいのソファーに視線を上げた。

は雑誌を読んだままソファーで仰向け。

「おぃ、なんで黙ってんねん」

微動だにしないに溜息を付いて雑誌をまた開く。

仕事の依頼はさっき説明があって、今は悟待ちのいわば待機中。

閉じた続きのページをパラパラ捲って探しとったらが雑誌を閉じたんが視界の中で見えた。



「あのさ、お願いがあるんだけど」

「せやからなんやねん」

「キスして欲しい」

ゆっくりまた視線を上げたらは寝転がったままこっちを見とる。

眉一つ動かさんと、いつも通りの表情で。

「・・・・頭大丈夫か?」

「嫌ならいいよ。悟に試して貰うか」

「せーへんなんて言うてへん」

雑誌が床に落ちるのも構わず立ち上がったらも身体を起す。

「顔、上げへんかったら出来へんで」

相変わらずはときめきとかドキドキとは無縁の表情で俺を見上げる。

立ったまま、背もたれに手付いて身体を屈めてお願い通りキスをした。


付き合い自体は短くないけど、意識なんてした事も無く。

甘い反応なんてこれっぽっちも期待してへんかったのに。

ちょっとずらした口元から吐息が漏れたんを聞くと。



「・・・・・押し倒して、とは言ってないんだけど」

「・・・・・す、すまん」


怪訝な顔で肩を押されてキスが終わった。



「とりあえず、もういいよ。ごめんね。ありがと」

そう言ってはテーブルに置いとった雑誌に手を伸ばした。

「ホンマ、なんなん、今の」

「実はさ、この前オウルとキスしたんだけど」

「な!」

「アイツ、上手なのよね」

「ちょ!おま!なにしてんねん!」

俺が勢いよく雑誌を取り上げたのに流石に驚いた様で。

「だって、恋人同伴で潜入だったから仕事で仕方なく」

仕事、と言われれば俺は当然黙る事しか出来ず。

「でさ、その時にアイツ超自信満々で「ドキドキさせてすまないね」なんて言うから気になって」

「・・・・・なにを?」

「あたし別にドキドキしなかったんだけどなー、って。だから他の人とはどうなんだろう、とか思っただけ」



つまり実験台か、俺は。



「で、俺はどうなん」

「オウルよりは下手だった」


あかん、普通にイラっとする。この感想。


「でも、オウルよりはドキドキした。・・・・・・あたし、波戸の事好きなのかな?」

「いや、そんなん俺に聞かれても」

「だよねー。だからどうってワケじゃないけど」

が手を差し出したから俺はその手に雑誌を返す。



「・・・・・俺は、キス終わった今の方がドキドキしてんで」

「へー。あたし今はなんともない」

「せやから、これから本気で口説きに行ってええ?」



正直落とす自信はあんま無いけど、オウルよりは全然ある。



「そんな事、あたしに聞かれても」




でも、その笑顔に先俺が落とされた。



Revolutionっぽい瞬間







21-03.2007