誰にでも優しいアイツはあたしを段々と苛立たせる。 「良い事だとは思うのよね」 はソファーに座っているレノの足を枕にソファーに横たわっている。 レノはなど気にせず後ろに体重をかけて天井を見る。 「で」 「レノみたいに冷たいよりは優しい方が断然いいんだけど」 「おい俺に対して失礼だぞ、と」 「事実じゃん」 「おいおい今こうして話聞いてるぞ、と」 「でもさー、もうあたしには他の子程優しくないのよね」 同期で部署こそソルジャーとタークスと異なったがとザックスは戦友になった。 二人ともド田舎の出で目指す形は違えど志は同じ。 歳も同じで話も合った。 は自分に無いザックスの純粋さと強靭さに憧れた。 最初は。 誰に聞いても聞かなくてもザックスの評判はよかった。 約束など破らないしいつでも笑顔で相手をしてくれる。 冗談を言って励ましたり励まされたり。 「もうこれで何度目だろう」 「・・・・確か、二十四回目だぞ、と」 「やっぱりレノって意地悪だ」 はザックスが約束を破るたびにこうしてレノに甘える。 別にそんな大きな約束ではない。 「久々に一緒に飯でも食うか」と誘われたり「呑みに行こうぜ」と誘われたり。 毎回すっぽかす訳ではないが、殆どはその場限り。 「直接言っちまえよ、守る気が無いなら言うなって」 「ヤだ」 要ははザックスが好きなのだ。 レノの言う事は当然の事で、けれどもしその一言でこの関係が終わってしまったらはきっと後悔する。 「我慢してればいいだけだし」 それぐらい好きなのだ。 「お前我慢とか一番嫌いだろ」 「うん」 「だったらさっさと告って玉砕して来いよ、俺が慰めてやるから」 「いらない。キショい。遊ばれて捨てられるのがオチじゃん」 「よくわかってるな、と」 「・・・・お腹空いた」 は起き上がりレノから離れる。 ザックスが来るのを毎回律儀に待つが結局最後は空腹に勝てずご飯を食べに行く。 後ろでレノが「ついでに煙草買って」的な事を言っていたが聞こえない振りをしてドアを開けた。 ら、ザックスがいたので思わずドアを閉める。 その行動にレノは不審がっていたがザックスがドアを開けたのが見えて何も言わなかった。 「なんで閉めるんだよ」 「あ、ごめん。つい」 「今戻ってきたんだよ、飯食いに行こうって言ってただろ?」 「あー、あたしもうレノと食べちゃったんだよね」 (嘘付け)とレノはを見る。 「ごめんね、また誘ってよ。じゃああたし主任に呼ばれてるから」 「・・・・あぁ、そっか。わかった」 ザックスの横を抜けてはその場から離れた。 ああ言った手前、食堂には行けず仕方なく休憩室に向かいコーヒーを買った。 「主任に呼ばれたんじゃないのかよ」 少し怒気を含んだその声に驚けばザックスが隣に座った後。 「・・・・えーと」 「しかも飯も食ってないんだってな」 (死ねレノ)とはコーヒーを飲みながら強く思った。 「ホラ、食えよ」 と渡されたのはクリームパン。 の大好物だ。 「ごめん」 パンを受け取り言おうとした台詞を先に言われては止まる。 「その、約束すっぽかしてたのはワザとなんだよな」 「な、んで?」 「俺らさ、お互い昇進して昔みたいな感じじゃなくなっただろ?」 仲が悪くなったのではない。 もっと複雑になったのだとは思うが口にしない。 「一番最初はホントに仕事で行けなくて謝ろうとしたけどお前何にも言わなかったから嫌われたのかと思ってさ」 「・・・・そうだっけ?」 「そうだよ。でまた誘ったら普通にうん、って言うし。その場限りなんかなぁ、とか」 「あたしは、ザックスがいつも軽くその場限りの口約束してるんだと思って、た」 「んな訳あるかよ。ちゃんと毎回ドアの前まで行ってたって。ただ」 「ただ?」 「さっきみたいに普通に断られそうで。しかもやっぱりお前何にも言わねぇし」 「・・・・アンタ、あたしが好きなの?」 唐突にがそう言えばザックスはテンポを少し置いて赤くなる。 「なっ!」 「なんか、馬鹿みたい」 「なにがだよ」 「あたしたちが」 そう笑うとはクリームパンの袋を開け噛り付いた。 ザックスは理解出来ずに眉を顰めている。 「じゃあ、明日はあたしから迎えに行くから一緒にちゃんと飯でも食いますか」 「お、おう・・・?」
21-06.2006 |