「腹が減ったぞ、と」 「さっき食べたじゃないですか」 「あんなモンが本気で腹に溜まると思ってるのか?」 右足はギプスで固定され、腕にも膨大な量の包帯が巻かれ頭も赤毛をひきたたせるアイテムの様に包帯が巻かれている。 顔には無数の傷があり、服で見えないが打撲の後も多い。 「こんな状態なのによくそんな事が言えますね」 「あー、煙草も吸いたいぞ、と」 レノが雑居ビルで撃たれて落ちてからもう三日。 毎日このやりとりだ。 「あたしだっていい加減通常業務戻りたいんですけどー」 ノートパソコンを病室に持ち込み仕事をする。 本来ならばちゃんと神羅ビルで自分のデスクがあるのだがツォンから「レノが逃げないように見張っていてくれ」と言われたのだ。 「大体足が折れてるのにどうやって逃げるんですか。トイレすら行けないのに」 「は俺を甘く見すぎだぞ、と。これぐらい俺にかかれば簡単に抜け出せんだよ」 「へぇー。それはそれは」 「あ、お前今バカにしただろ」 「してないっすよ」 レノの顔すら見ずにはキーボードを打つ。 「この機会に少しゆっくりしたらどーですか?先輩ってあんまり寝てなさそうだし」 「ゆっくり、ねぇ」 「現にあたしがここに来てから一回も寝てないじゃないですか」 隙あらばはレノの顔に落書きでもしてやろう、と思っていたがそのチャンスはまだ無い。 「ルードん時は寝てるぞ」 「・・・・あたし、うるさいですか?」 「静かなは不気味だぞ、と。それに」 「それに?」 「折角お前と二人っきりでゆっくり話せるのに寝るなんて勿体無いだろ」 ようやく画面から顔を上げればレノと目が合った。 「そういう意味では入院も悪くないかもな。主任に感謝感謝」 「な!」 「お、赤くなった」 「なってません!コーヒー買ってきます!」 は勢いよくノートパソコンを閉じて病室を出る。 ドアを閉めるとレノの笑い声が聞こえた。
16-07.2006 |