恋や愛などという定義ではなく。 もっと純粋に。 ただ求めてみたかったのは何だったのか。 目の奥がチカチカする感覚を押さえレノは足元を見た。 不規則に呼吸するもう物体に近かった。 「まだ生きてるのか?」 しゃがんで額にくっついた髪を除ければ目が合った。 「あーぁ。もう少しぐらい時間稼げると思ったのになー」 「だから言ったぞ、と。俺を甘く見すぎだって」 出来るだけ痛がらないように抱き上げてベッドに寝かせる。 足を撃たれているのでレノ自身ももたつくが難しい事ではない。 寝かせるとすぐにシーツは赤く染まる。 「あの日と逆だぞ」 「・・・・あの時、あたしが本当に毒を打ったと思うー?」 言われてレノは右の二の腕の下に服越しに強く触れた。 確かに異物に当たる。 「もうどうでもいいぞ、と」 「ホントにあの日、偶然アンタを見つけたんだー。最初は助けるつもりなんてなかったけど」 「それ以上喋るな。黙ってろ」 「煙草、吸いたい」 今度はレノが自分の煙草を咥えさせ火を点けた。 それを歯で噛み深呼吸をする。 「あたしは、生き急いだんだねー」 喋ると煙草が落ちたのでレノはベッドに着地する前に受け止め自分も一口。 「レノ」 初めて呼ばれた名前は煙草よりも脳に響き。 「キスして」 初めて交わすキスは血の味がした。 名前も知らないままは死んだ。 実はもう既に意識は限界だった。 身体は熱く血液は沸騰しそうな、そんな発汗。 毒は本当に打たれていたのだ、とレノは確信した。 けれど唇を離しまた煙草を吸えば煙と共にその感覚が消えていく。 「最期まで胸クソ悪りぃ女」 その血が解毒剤と知るにはそう時間はかからなかった。
03-09.2006 |