平手を食らった。 避けようと思えば簡単に避けられたがあえて受けた。 結構な勢いで打たれたので顔の角度が曲がった。 面倒事はゴメンだぞ、と。 この一撃で全部終わるなら安いものだ。 女と別れるのは、書類整理の次に苦手。 面倒臭い。 「飽きた。もういらないぞ、と」本心を言えばこのザマだ。 「好きだ」なんて嘘っぱちは悦ぶクセにいざ本音を漏らすとすぐコレだ。 どんなに遊び慣れた女でも、どんなに純真な女でも違いは無い。 あの一言を言えば簡単に終わる。 一晩、温かさが恋しくなった時だけでいい。 あの独特の柔らかさに埋れて瞼を閉じて。 それだけを望めば望む程、一番嫌いな事を求められる。 知ってしまった心地よさは追い詰められれば追い詰められる程求めてしまう。 もう隠せない。 「クソっ」 殴られた頬を引金に思い出す。 裏切られ捨てられた。 汚い世界で一緒に生きてきたのに。 死線ギリギリの任務もふざけてこなして来たのに。 それをあんなに簡単に手放された。 「・・・・畜生」 次に目の前に現れたら。 「俺がどれ程お前に堕ちてたか、思い知らせてやるぞ、」 俺と居るのが一番だと。 お前と居るのが一番だと。
09-04.2007 |