普段のアイツは真面目が服着た女。

仮面でも付けているかのように。


「よっぽどココが気に入ったんだな、と」

ワザワザ偽造のIDカードまで作って自分が開けた痕跡も残さず。

「あー、レノ?」

密室で見つけるアイツはクスクスと笑いが絶えない。

最初の頃は腕に注射器を打ち込んでいたが頻度が増えてからは首に入れるようになった。

教えたのは俺だ。

「昨日、珍しいの貰ったの」

レノが居るのが可笑しいのか自分の言葉が面白いのか。

は笑っている。

「飛び過ぎだぞ」

「うん。わかってる。でもコレ凄くイイの」

レノに抱きつけば香水の匂いが遅れて香る。

たまに匂いのキツい物もある為はこういう場合はいつもよりキツ目に香水を纏う。

「イリーナが探してるぞ、と」

ただ立っていたレノの頬を指でなぞってはキスをした。

ズルイ女だ。

いつもなら絶対に見せないクセに。

でも教えたのは俺だ。

「もう止めるんじゃなかったのか?」

「これで最後にするから」

平気で嘘を吐く。

いつもなら冗談一つ言わない女のクセに。


そう教えたのは俺だ。


堕ちて来い、と。何度も何度も刷り込んだ。

そして堕とした。絶対に逃げられない世界に。

なのに。


デスクに置き去りにされた携帯が震えた。

スイッチが入ったようにはレノから簡単に離れ電話に出た。

すぐに出たのは音で相手が判ったからだろう。

主任だ。

つい今さっきまで縋り付いてキスを乞うて来たのに。

薬中の素振りなど微塵も見せず電話に対応しているをレノは後ろから抱きしめた。

一瞬は息が止まるが淡々と電話が続く。

「レノが探しに行っている筈だが」

漏れるツォンの言葉。

「レノがですか?いえ、会っていません」


なんて女だ。



レノはの首の痕にキスをした。

そして電話を当てていない方の耳に唇を寄せる。


「戻るまでもう少しかかるって、返事しとけよ、と」




ニスター









11-11.2007