「うーん」


バーツが管理している畑とは別スペースではしゃがみ込んでいた。

以前トマトの苗床を一株分けて貰い育成に励んでいたのだが一向に育たない。


「なんでだろう」

水も毎日欠かさずあげている。

日照りも良好。

土の状態もバーツからお墨付きを貰っている。


「まだ実が成らないのか?」

ふいに人影が出来たのでは顔を上げる。

「バーツ。うん、見ての通り」

一向に実をつけないトマトを指差すの隣にバーツも同じ様にしゃがむ。

「何かを育てるって難しいのね。みんな偉いな」

「いや、偉くはないけど」

「そもそも動機が不純だったのがきっとトマトにも伝わったんだ」

「・・・・動機?」

「バーツはさ、本当に農業が好きで好きで育ててるワケじゃん。だから野菜もみんな喜んで沢山実をつけるけど」

は違うのか?」

「まぁね」

「ならなんで育ててるんだ?」

その質問をされては思わず固まった。

考えも無しに受け答えをしていた結果がこれだ。

バーツが真っ直ぐを見ているのが空気でわかる。


「・・・・お、怒らない?」

「うん」

意味もなくは地面の土を摘まんでは捨てる。



「バーツと同じ事がしてみたかっただけ、とかだったり」

「俺と?」

「そう。バーツが楽しい事とか嬉しい事とかあたしも感じてみたいなぁ、って」

「なんだ。それならもっと早く言えばいいのに。手出してみな」

バーツは立ち上がると手早くトマトを移動する準備をする。

優しく根を傷つけないように掘り返しの両手に乗せる。


「だったら一緒にやればいいじゃん」


その笑顔が好きなんです。










07-07.2006