愛しい先輩に花を贈った。

「素敵な花ね」

笑顔だったけれど、受け取ってはくれず。

それでもめげずに僕は愛しの先輩にプレゼントを捧げた。




可愛い後輩が花を差し出した。

「これ受け取ってください」

毎日両手いっぱいの花束。

一度だって受け取った事は無く。




愛しい先輩は言った。

「馨くん、そのお花はどうするの?」




可愛い後輩は言った。

「受け取って貰えないから捨てちゃう」




本当は違う。

先輩の為に咲いてくれている花を捨てるはず無い。




本当は違う。

口と心がこれ程に天邪鬼な後輩だから。




愛しい先輩は手を差し出した。

「勿体無いから、今日は貰おうかな」




可愛い後輩は目を見開いた。

「あ、うん」




実は、毎日この花を届けている子がいる。

受け取って貰えない事を理由に。




実は、毎日この花を届けている子がいる。

受け取らない事を理由に。




「今日のお見舞いは、手ぶらだね」

愛しい先輩はとっくにお見通しだった。




「うーん。予想外の展開」

可愛い後輩が嬉しそうに笑っている。




愛しい先輩のお母さんが入院をしているのを知ってから毎日先輩に花を届けた。

僕が選んだ花を持ってお見舞いに行って欲しかった。

でも先輩は「気持ちだけで充分」

賢い僕はその足で病院に行き、毎日花を贈る。

愛しい先輩の大切な人に。




可愛い後輩が毎日花を届ける事が嬉しいと母は喜んでいた。

最初は本当に気持ちだけで充分だったけれど

断るととても嬉しそうに「そっか。今日も駄目か」

スキップしそうな勢いで背中を向ける。

可愛い後輩の日課。




「馨くん、今日の午後貴方の時間を少しください」


「もっちろん」
誰よりも君を愛す










28-01.2007