「ごめん、消しゴム貸して?」

「はい」

浜田は何の躊躇いも無くから消しゴムを受け取った。

けれどその指の感触に違和感を覚えて視線を手に集中させた。

「なにその指、どーした?」

絆創膏が一枚なら(あぁ怪我したんだな)程度で終わったが左指全部に一枚ずつ貼られていれば気にもなる。

「あぁ、コレ?実は・・・・」



は演劇部員だった。

当然、毎日放課後練習している。

そして三日前に衣装が出来上がり袖を通しての練習中。



「破れちゃって・・・・」

「じゃあそれ全部針で刺したのか?」

は恥ずかしそうに頷いた。


浜田の中でのはとても優秀だった。

成績だっていつも上位だし運動だって出来た。

現に体育祭ではアンカーを走っていたのを覚えている。


「・・・・、不器用だったんだな」

「・・・・まぁね。何度やっても綺麗に縫えなくて。その度にやり直してこの状態」

消しゴムを渡し終えた手を浜田に向けた。

それはそれは見事に貼られた絆創膏。



「オレやってやろうか?」

「え?」

「うん、オレ裁縫得意だし」

「でも悪いよ。浜田くん応援団で忙しいんでしょ?」

「休み時間とかにパパっとやれるよ。その代わり、頼みがあるんだけど・・・・」

「私に出来る事なら」

「今度の野球部の試合、応援に来てやってくれね?」

片目を閉じて浜田はを見るとはクスリと笑って頷いた。


「それともう一個」

「なに?」



「オレの事、ハマちゃんって呼んで」

一歩前進









20-06.2006