阿部隆也の機嫌の良い日。 と、言ってもその『良い』『悪い』の区別が付くのは野球部員。 そんな中 「阿部くん、今日ご機嫌だね」 「・・・・なんでわかるの?」 理科の実験の班割で、水谷はとペアになった。 「なんとなく、醸し出てるオーラが」 そう言われ、水谷は阿部を見た。 確かに今日は機嫌が良い。 そしてその理由も水谷は知っている。 三橋との行き違いが一つ解消したからだ。 「俺たち以外で阿部の調子当てたのって、澤村が初めて」 「人間観察が趣味なのよね、私」 プリントに実験の経過の数値を記して行く。 記録をが。水谷は温度計の数値が規定値を越えないように火の番。 「水谷くんはいつもご機嫌だよね」 「え、そう?」 「世の中みんな水谷くんみたいになればいいのに、って思うぐらい」 「えー、それ褒めてる?」 「褒めてるよ」 「でも、もなんて言うか、雰囲気ほんわかしてるよね」 「そう?」 「なんか俺の周りって騒がしいからさー、と話してると落ち着く感じ」 横に座っていた花井は内心(お前も騒がしいけど)と思うが口にはしなかった。 ゆらりと目の前の炎が揺れて、の姿が霞む。 まるで自分の中ののイメージの様に。 「あのさ、今の俺ってどんなオーラ醸し出してる?」 「ご機嫌な感じ」 「俺ね、多分今一番ご機嫌なオーラが出てると思う」
25-03.2007 |