焔の錬金術師が火をつけた。 チリチリ。 焔の錬金術師が火をつけた。 チリチリチリチリ。 焔の錬金術師は、誰に火をつけた? 「ロイ!見て見て、今日咲いたの!」 ノックもせずに、ドアを開けてもここにはを咎める人はいない。 「そうか。もうこんな時期か」 毎年決まった時期にだけ咲く花。 庭師から一株貰っていたは一年かけて咲いた花を抱えてロイに見せる。 「ここに置いておくね」 机の上。 決して仕事の邪魔にはならない場所を選んでは鉢を置く。 部屋に舞う、花の香り。 口にも顔にも出さないが、最近仕事が積もっているロイにとってはささやかな癒しだった。 「窓開けていい?」 は部屋の籠もった空気が気に入らず、窓に近づく。 「どうぞ」 窓とドアでは、普通ドアの方が返事を待つだろう。と考えながらロイは返事をした。 「どうせまた窓も閉切ったまま部屋から出ずに仕事してたんでしょ」 いつもそうだ、とブツブツ文句を言いながらは窓を開けた。 「時間が経つのが早いんだよ」 書類に目を通しただけで日が差す事もある。 「潤いがないなぁ」 「まぁ、一応焔の通り名なんでね。水分とは程遠い関係なんだろう」 「寂しい人生」 「そうでもないさ」 風を入れようと窓を開けるがいる。 花が咲いたと届けてくれるがいる。 今、自分の隣にがいる。 「こんないい人生、軍人には勿体無い」 焔の錬金術師が火をつけた。 焔の錬金術師に火をつけられた。 それとも 焔の錬金術師が火をつけられた? インソムニア 11-02.2007 |