潜入捜査を頼まれたまではよかった。 は鏡の前で腕を組んで複雑な顔をする。 髪はカツラをつけて普段の三倍近い長さになっている。 そしてヒラヒラの白いワンピースの洋装。 部屋から出れば隊士が腹を抱えて笑い転げていた。 「見せモンじゃねーぞ!」 良家のお嬢様の出来上がり。 土方の隣ではニコニコと微笑む。 その不気味さに土方は溜息を吐きたくなるがそうもいかない。 別荘でのパーティ潜入が今の真選組のお仕事。 山崎は執事として最初こそ一緒に招待されたがもう既に別行動。 沖田は万一の為外で待機。 は今、土方の婚約者になっている。 「あー、煙草吸いてぇなぁ」 「アラいけませんワ、その様な事」 「・・・・お前、すげぇな」 「これが本来の姿デスわよ」 丁度ウエイターが近づいてきたので土方は片手を上げて呼ぶ。 トレイに乗せられたドリンクを取り一つをに渡す。 「ありがとうございま・・・・」 土方越しにウエイターを見たは顔が引き攣る。 「ん?」 と土方も振り返りウエイターを見た。 「アレ、お宅らナニしてんの?俺のストーカーですか?」 はグラスを落とした。 「ったく、仕事中に動揺なんてしてんじゃねぇよ」 業務員用の部屋に連れてこられたは自分の失態に自己嫌悪していた。 服が濡れたので主催者が新しいものを用意する、となり目立ってしまったのだ。 とりあえずやんわりと断り一旦土方と別行動する事にする。 恐らく今頃煙草を吸っているであろう。 「で、怪我は?」 首を振って返事をする。 「全く。銀さんだったからよかったものの新八だったら叫ばれてるぞ」 「それ以前に仕事選べよ万事屋。ウエイターとかしてるから益々落ちぶれていくんだろうが」 「いやいやいや、そんな選り好み出来ませんから、ホント」 「あーもう、最悪だ」 「銀さん的には結構美味しいんだけど」 「は?」 「だって、なぁ?」 スカート姿で会うのはこれが二度目。 今思えばあの時までは銀時はが女だと知らなかったのだ。 「その胸ナニをどれだけ詰めたんだ?夢か?希望か?」 「今あたしが刀持ってない事に全力で感謝しろよ」 「そんなモン詰めなくたって銀さんが大きくしてやるって」 綺麗に化かされた頬に銀時は軽く撫上げる。 「俺に惚れとけって、な」 「無理」 「早いだろォォ!もっと溜めて言えよ!」 そのままの頬をつねった。 「・・・・無理」 「こんな時だけ言う事聞かなくていいから!しかも二回も言わなくていいからァ!」 片側だけでなく銀時はの両頬をつねる。 「銀さん泣いちゃうぞー。それでもいいのかコノヤロー」 「貴様の様な万事屋など腐る程いるから誰も困らんだろ」 「オイオイオイ。そんな事言っちゃっていいワケ?銀さんは世界に一人つーか宇宙に一人ですけど」 「・・・・いい加減離せよ、手を」 「大体どの人種だって男と女しかいねーんだしよォ、それでいいじゃねーか」 銀時はつねるのを止めてそのままの額にキスをする。 「あたし、アンタの事嫌いなんだけど」 「・・・・素直になりすぎなのもどうかと思うぞ。銀さん打たれ強いにも限界あるんで」 「アンタだけだ、女扱いすんの」 「そりゃあ惚れた弱みなんじゃねーの?」 「あたしに聞くなよ」 「だーかーらー。黙ってキスされてりゃいいんだよ」 そう言うと銀時がまた顔を近づけたのではゆっくり目を閉じた。
21-07.2006 |