「あっくんのあだ名って何とかならないの?」 「え、なに突然!?」 と千石は授業をサボって屋上で早弁をしている。 「呼ぶとあからさまに不機嫌になるじゃん」 「そりゃあ、嫌がってるし」 千石はの弁当箱から玉子焼きを誘拐した。 「あ、コラ!」 「うん、美味しいね!」 「キヨは頼めばお弁当作ってくれる女の子いるんだからあたしのには手出さないでよ」 「えー、いいじゃん。の玉子焼きが一番好きなんだもん。換わりにから揚げあげるから」 食堂で売られているから揚げを楊枝で刺し千石はの口に持って行く。 それをはパクりと食べ話を戻す。 「そもそもキヨが呼び出したんでしょ?なんであっくんなの?」 「うーん、最初は亜久津ーとか呼んでたけどなんか他人行儀っぽかったから名前で呼ぼうとしたら読み方がわかんなかったんだよ」 「ジンじゃん」 「そうだけど、最初は字だけみるとジンかヒサシか迷ってた、気がする」 ボケーと千石は空を見上げて必死に思い出している、ようにには見えた。 「大体さ、は彼女なのになんであっくんって呼んでるのさ。あっくんはちゃんとって呼んでるのに」 「今更恥ずかしくて呼べない・・・・」 「わー、可愛いー!照れてるー!」 「キヨうるさいよ!」 は玉子焼きを箸でぶっ刺して千石の口に突っ込んだ。 「まぁまぁ、ここはキヨスミくんに任せなさい」 モグモグしながら満面の笑顔で千石は胸を叩いたがはこれっぽっちも信用してなかった。 「で、何の用だよ」 放課後、下駄箱で待っていたのは亜久津。 少し離れた階段で千石がに向かってピースサインをしている。 「・・・・あっくん、キヨになに言われたの」 「お前が大事な話があるってアイツに伝言頼んだんだろ」 明日の玉子焼きには毒を盛ろう、とは決めた。 「えーとえーと。忘れちゃった」 「はぁ?」 「ごめんね!」 そさくさと靴を履きは亜久津に背を向けるが肩を捕まれた。 「どこ行くんだよ」 「ど、どこって、帰るんだけど」 その答えが不服なのか亜久津は肩から腕に持ち替えてを引っ張り歩いていく。 横目で千石を見ればガッツホーズをして(ガンバレ)と口が動いていたので(死ね!)とも口パクで答えた。 連れてこられたのは意外にもテニス部室で亜久津がドアを開ければ着替え終わっていた南がその勢いに固まっていた。 「邪魔だ」 と亜久津が言えば南はを心配そうに見てラケットを持つ。 「大丈夫なのか?」 「うん、多分。ごめんね南」 「いやいいけど」 そんな会話で終わり部室で二人きり。 ドア付近に立ったままのに亜久津は近づきそのまま鍵をかける。 そしてをドアに押し付けてキスをする。 「名前がなんだって」 「・・・・なんでもない」 「その気になったら呼んでみろよ」 そう言ってまたキスをする。 「させてやる」
25-06.2006 |