捕まったのは私が弱かったから。 それは後悔でも懺悔でもない事実なだけ。 自由を奪われ話す事すら許されない状態ではヘリに乗せられた。 歩く事すら許可して貰えなかったので移動は全て抱えられた。 今横に座っているこの男、レノに。 彼は余程暇なのだろう。 時々思い出したように話しかけては「あ、喋れないんだったな」と一人で納得している。 向かいに座っている女、イリーナは「何度目ですかそのやりとり」と呆れている。 どうしてこんなに平和なのだろう。 私はこんなにも不自由なのに。 逆の立場なら。 私がこのどちらかを拘束し仲間といればこんな展開になるのだろうか。 仲間は死んだ。 任務は失敗したのだ。 私は捕虜として生かされてはいるが無傷ではない。 ヘリの振動と自分の呼吸で身体の至る所が悲鳴を上げる。 「痛い」と言うつもりも無いが閉じられた口のお陰で呻き声すら漏れない。 「神羅は良い所だぞ、と」 レノのその言葉には嘘は無いだろう。 良い、の意味が立場によって違うだけで。 「なぁイリーナ、コイツは何日で吐くと思う?」 新しいおもちゃを手に入れたレノは子供のように無邪気だった。
03-07.2006 ⇒ |