ドロリポタリと血が出るがレノはそれを止める気が無い。

車に乗りその場を離れる。

任務としては成功だが内容としては良くない。

肩からシートに血が移り広がるのが感覚でわかる。

(このままほっといたら流石にヤバいか)

本当なら任務完了の報告を入れたら一度本社に戻るのだがどうにもそんな余裕は無さそうだ。

グラ、と一瞬意識が飛ぶ。

身体に衝撃。

意識は混濁。

(あぁ、やっちまったぞ、と)

レノはそのままハンドルに崩れ落ちた。




「・・・・?」

目が覚めれば見慣れない天井、というのは珍しくない。

「あー、起きたー?」

横を向けば煙草を吸っている女がいた。

「アンタ事故って死にかけてたけどー、助けない方がよかった?」

「・・・・失態だぞ、と」

「あんな傷で運転するなんてよっぽど激しい仕事なのねー」

語尾がダルい女だったのが耳障りだ。

「お前には関係無い」

「あたしもさー、周りがどうしてもって言うから処置しただけでアンタが生きようが死のうがどーでもいいのよねー」

器用に煙草の煙で輪っかを作って吐き出す仕草をレノは見つめる。

「だからお礼は村の人に言って」

女はそのまま出て行った。

よろよろと起き上がり窓を見れば昼間。

聞き慣れない子供の笑い声とあの女の声。

傷に触れれば痛みこそあるが丁寧に治療されている。

服は簡素な服に変えられており、見える範囲にスーツは無い。

ロッドも無い。


「主任に言えないぞ、と」


立ち上がればその痛みは意識が飛ぶスレスレの度合い。

壁に手をつくという無様な姿。

それでもドアまで辿り着けばレノが開くより先にが戻って来た。

「あー、出て行くの?ならアンタのモン取って来るよ」

は隣の部屋へと歩いて行き紙袋を持って出てくる。

そしてそれをレノに差し出す。

「一応身に着けてたモンはここに全部あるからー」

「お前のその喋り方ムカつくぞ、と」

「ならさっさと出て行けばー?」

荷物を受け取る事すら出来無いレノの足元には荷物を置いて煙草に火を点ける。


「・・・・煙草」

「ん?」

レノは顎で煙草を指す。

は咥えていた煙草をレノの口に押し込んだ。

普段は吸わないメンソールの味と初めて吸う銘柄の何とも言えない刺激。

麻酔の様に染み渡る。


「死に急ぐからこんな目に合うんだよ」

レノは壁にもたれそのままズルズルと座り込んだ。

どうやら本格的にヤバいらしい。

「さて、どうしたモンかねー」

レノの口から煙草を奪い返し、は大きく息を吸った。

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12-08.2006