次に意識を取り戻した時は、嫌と言う程見慣れた医務室の天井だった。 「あ、目覚めました?」 「・・・・イリー、ナ?」 「おーい、先輩?起きてますか?大丈夫ですか?」 「イリーナ、うるさいぞ、と」 「うわ、ひっどーい」 夢?と思った。 ので聞いた。 「オイ、俺どうしたんだ?」 「ちょっとホントに大丈夫ですか?先輩ビルの前に倒れてたんですよ」 「・・・・ビルの前?」 「任務終了の報告してから行方不明になって昨日ビルの前で倒れてたのを社員が発見したんです。覚えてないんですか?」 覚えているのは撃たれて、刺されて、任務報告して、事故って、やたらとムカつく女に治療されて、煙草を吸った事。 「全身怪我だらけなのにキチンと手当てしてましたけど、どっか病院行ったんですか?」 「病院・・・・」 「レノ先輩?」 起き上がればイリーナが怒鳴ったがレノは構わず着ていた服を乱暴に肌蹴、怪我を見た。 綺麗に処置されているのだろう、包帯が巻かれてある。 夢ではない、と思った。 けれどあの後の記憶がまるで無い。 「どうやって倒れてた?」 「どうって、普通に道にバタって倒れてたらしいですよ」 「誰か居たとか?」 「いえ、聞いてませんけど。どうかしたんですか?」 「なんでも無いぞ、と」 そう言ってレノはまたベッドに倒れこんだ。 その衝撃で傷が疼く。 「・・・・なんでも、無いぞ、と」 この胸くそ悪い消失感。 あの女の喋りに煙草の匂い。 あれもこれもどれもそれも。 全部。 脳裏に焼きついてしまった。
15-08.2006 ⇒ |