「随分と探してたみたいだねー、あたしの事」 口調も匂いも幻と現実のラインを行ったり来たりしていたがやっと安定した。 銃を持っていない指にはレノの自宅のカードキーが握られている。 「あの時盗ったのか」 「まさかタークスが運ばれてくるとはねー。世の中何が起こるかわからないね、ホント」 ピン、とカードキーが弾かれレノの足元に滑り寄る。 「アンタに盗聴器と発信機埋めたのもまだ気付いてないみたいだし」 レノの視線の温度が下がる。 殺そう。と決めた。 「あ、あたし殺してもいいけどアンタの身体にはソレ以外に毒物が入ってるから」 「へぇ。なんともないぞ、と」 「すぐに効いたら意味が無い、時限式の特別制。あと半日もすれば血を流して死ぬよー」 嘘かもしれない。 嘘じゃないかもしれない。 なにせあの瞬間のレノは完全に意識を失っていた。 痛みで異物混入の形跡にも気付く余裕が無かった。 治療は完璧で戻ってからも面倒臭い、とマトモな検査など全て断っていた。 「右の二の腕の下、一センチぐらいの傷があるからー。触るとすぐにわかるけど言わないとあんまり触らないよね、そんな所」 「何が目的だ」 「反神羅組織のする事なんて、決まってるじゃん」 良くも悪くも偶然はある。 今回は間違いなく後者だ。 信じられない事に自分のミスで隙を作ってしまった。 個人的にではなく組織的な。 「タークスは今日アンタ以外は外に任務。いい日ねー、とてもいい日だわ」 「今俺がお前を落として行けば計画は失敗に出来るぞ、と」 「でしょうねー。でも実は毒の効き目があと三十分だ、って言ったら?」 レノは一歩前に出る。 カードキーを踏みつけたがそんな事どうでもいい。 「さぁ、アンタの好きな楽しい時間が始まったねー」 「俺を甘く見すぎだぞ、と」 「死に急ぐといい事無いって、言ったのに」 銃弾はレノの足を貫通した。
30-08.2006 ⇒ |