「やっぱりいいよ、そんなの」 「「いいのいいの!」」 「あの、藤岡くん・・・・」 「この日の為に皆で準備してたんで」 光と馨と手を繋ぎ、ハルヒが先頭を歩く先はかの有名なホスト部。 元々双子繋がりでお客として姉妹も二・三度顔を出したことがあり、部員とも親しくない訳ではない。 しかし退院祝いをして貰うのは気が引けた。 お陰で今日のホスト部は貸切。 「あたし、常連客でも無いんだけど・・・・」 「もー、そんなの気にするなって」 「そうそう、皆の事心配してたんだから元気な顔見せてよね」 「だ、そうですよ」 退院祝いはお茶会。 扉を開けると部室いっぱいにの好きな花が用意されていた。 「凄い・・・・。この時期だとまだ蕾なのに」 「この日に合わせて満開になるよう手配してみました」 「鳳財閥ならでは、ですね」 一輪手に取り、はその匂いを嗅ぐ。 「ありがとうございます、先輩」 「いいえ、これぐらいいつでもお贈りしますよ」 「ちゃーん、コレはね、僕と崇からだよ〜」 痛みが走らない優しさで手を引かれて案内されたのは紅茶とケーキが用意されたテーブル。 「すっごく美味しいよ〜、ね、崇」 「あぁ」 モリが引いた椅子にはゆっくり腰掛ける。 「因みに紅茶は俺が煎れて進ぜよう」 ティーポット片手に環はのカップに丁寧に紅茶を注いだ。 「ねー殿、僕らは?」 「お前らは自分で淹れろ。今日俺はにだけ紅茶を注ぐと決めているんだからな」 「まぁ、それなら仕方ないか」 「あ、これは自分からです」 渋めの配色の紙袋をハルヒはに手渡す。 「さんが以前美味しいって言っていたお煎餅です」 「あ!藤岡くんの家の近くのお店の?」 「えぇ」 「ありがとう、あのお煎餅本当に美味しくてまた食べたかったの」 各々席に着きケーキを食べながら最近の出来事を話して談笑する。 実はその内容の殆どは毎日見舞いに来ていた馨から聞いた話だったのだが、はその面白さに笑いが絶えなかった。 「さて、そろそろお開きにするぞ。退院したとは言え病み上がりには変わりないんだ」 「そうだねぇ〜。また明日もお話できるもんね!」 「うむ。今日だけとは言わずこれから俺は毎回の為に紅茶を淹れよう」 「なんだか心配ばかりかけてしまってすみませんでした」 「そう思うなら、これから毎日このホスト部に来ては頂けないでしょうか」 環は恭しく頭を下げてに手を差し出す。 その手に触れ、は立ち上がった。 「えぇ、喜んで」 「「はい、そこまで」」 「は僕らが送って行くから後片付けよろしくね、殿」 二人で器用にの肩を抱き、三人で部室を後にする。 律儀にもは「今日は本当にありがとうございました」と言ったがそれは次第にドップラー効果を帯びて消えていった。 「アイツらは本当にいい所でいつもいつも・・・・!」 「今日ぐらいは大目に見てやったらどうだ」 「・・・・ま、に関してはあの二人が一番必要だろうし」 「「はい、コレ」」 車で送って貰った自宅前。 二人から手渡されたのはケースに入ったヴァイオリン。 「誕生日に渡したかったんだけど、病院だったから」 「中にスペシャルなメッセージが入ってるから楽しみにしてていいよ」 抱える様に受け取りは車を降りた。 「ありがとう、大切にする」 「「それじゃあ、おやすみ」」
13-08.2006 ⇒ |