「付き合ってません」

この三年間嘘偽り無く言い続けたこの台詞。

けれど誰も信じてはくれない。

なぜなら。

「日下くんは付き合ってるって言ってるじゃない」

こう切り返される。

彼女達の中ではあたし<日下万里。

あたしと万里の因縁を最初から話せば納得してくれるだろうか。

けれど何よりも彼女達の気持ちがわかるのもあたし。

こうなる以前のあたしも、万里が好きだったからだ。




ー」

遅刻してダラダラ歩いているに平は窓から身を乗り出して手を振る。

はアイコンタクトと軽い挙手でそれに答え急ごうともせずゆっくり歩く。

「購買でパン買って来てー!」

と言ったと同時に平は身を引っ込めた。

恐らく教員から雷を落とされたのだろう。

(馬鹿だなー)

そう思い教室の窓を見ると、万里と目が合った。


平は唯一女の子でを名前で呼ぶ。

それは恋愛感情ではなく親友として。

その理由として万里が幼少期女の子の格好をさせられていたのと同じでは男の子の格好をしていた。

三人の兄とと弟、という家族構成上それは不思議ではない。

平は最初を男の子だと勘違いし、その時の友情がそのまま今に至る。

しかし、と万里は違った。

万里もの状況と若干のニュアンスの違いはあるが幼少期は男の子にも関わらずスカートを穿いていた。

はそんな可愛い万里に憧れていた。


けれど今では。

万里が窓から手を振ろうがはその全てを無視する。

そしてスタスタと校舎に消えて行く。

そんなの姿を万里はただじーと見ている。


こんな関係。

昔は二人で仲良く遊んだこともあった。

勿論平を入れて三人で遊ぶ事が最も多かったが。

手を繋いで歩いたり公園で駆けずり回ったりご飯を一緒に食べたり。

思春期、と言ってしまえばそれまでなのだろう。

は毎日と言っていい程見ていた万里がある日急に男の子だと認識してしまった。

もう手も繋げない。

でも平には絶対言えない。

きっとの考えは単純で軽率で万里を一番傷付けただろう。

「あたし、万里と距離を置きたい」

その言葉に万里は何も言わなかった。

だが平とは変わらずの関係でいた事が、万里を更に傷付けた。


嗚呼、この恋実るべからず。 1








08-08.2006