「・・・・今度はなんだ」

平の部屋ではなくは今和の部屋に居る。

曰く、『万里ちゃん大好き同盟』の二人。

「今日また万里ラブな子に絡まれた」

「はぁ」

「もうヤだよぉ」

クッションに顔を埋めて声を絞る。

「お前は結局万里がお前を裏切ったと思ってるんだろうな」

参考書を広げて勉強の準備を着々と進める和。

「女の子だと思ってたのが急に男になって」

「和くんだってそうじゃんか」

「俺は今でも万里ちゃんを愛してる」

「あぁ、そうだった。あたしより重症なんだった」

「まぁ平はあの通りだからな。でもいつか平もお前より背が高くなる、かどうかはわからんか」

「お兄ちゃんは鬼なんですか?」

「いい加減、許してやったらどうだ」


中学に入って万里が少し不良サンしてその後。

格段に男を上げた万里とキスをした。

その日は平の部屋で二人して話をしてて、途中で万里が加わって。

平が昭さんに呼ばれて部屋を出てすぐ。


「・・・・はぁ」

は思い出してテンションを下げる。

昔はよく「ばんりすきー」とか言っていたが今はもう違う。

立場が違う。

状況が違う。

感情が違う。

「和くん、恋愛って苦しいね」

「確かに勉強の方が楽だな。で、今日は食べて帰るのか?」

「ううん、もう帰るよ」

ご丁寧にはクッションを所定の位置に戻し部屋を出た。

「あら、もう帰るの?」

夕飯の支度をする昭にその旨を伝えて玄関で靴を履く。

平は今日は部活で遅い。

万里も遅い。

「お邪魔しましたー」

「気をつけてね」

昭の笑顔には満たされる。

その足で帰宅せずまた学校へと向かった。

制服のままだったので登校と変わらず門をくぐる。

「あれ、どーしたの?」

「忘れ物ー」

下校する友人に問われそう答えると笑われた。

二人がバスケ部員として体育館で練習するようになってからギャラリーがとても増えた。

もその一人。

たまにこうして覗きに来ている。

キャーキャー言う女の子に隠れるように。

その中心で元凶の万里を見る。

シュートを決めれば(と言ってもフリースロー練習)その度に歓声を投げる女の子へニコニコニコニコ。


万里が好きで好きで。

「好き」と言葉にしても伝えきれないドロドロした気持ちが溢れて止まらなかった。


「・・・・万里なんて大っ嫌い」

この気持ちがシュートの音と歓声で消えればいい、と思った。


嗚呼、この恋実るべからず。 2









09-08.2006