「なら今日は非番ですぜィ」 ニタニタした顔で沖田は銀時に言った。 「オイオイ総悟くん、俺は別にあんな子探してるとかそういうんじゃないんで」 「へぇ、そいつはすまねぇでさァ」 更にニタニタニタニタした顔で沖田は銀時の肩に手を置く。 「アイツ非番は川原で寝てる事が多いですぜ旦那」 元々以前から銀時はが見回りをする際に万事屋から降りてくる事が多かった。 その当時はまだ「よぉ真面目に仕事なんてごくろーなこって」と言う程度でも「そっちは相変わらず暇そうだなぁ」と言う程度。 事実を知った今(と言っても自身は隠してた訳でも騙していた訳でもない)は銀時が無駄にちょっかいを出すようになった。 そして先日の出来事。 銀時の右頬は未だに赤く腫れている。 胴体が繋がっているだけまだマシだ。 「俺ァと旦那を応援しやすぜ」 昨晩は沖田にとってそれはそれは面白い一夜だった。 あのが誰とも一言も話さず眉間に皺を寄せ見るからにイライラしている。 山崎始め、土方や近藤すら近づけない怒気を孕んで。 唯一事情を知っている沖田は一人楽しくその様子を傍観し、たまに「ファーストキスがパフェ味とは中々」などと話しかけを更に不機嫌にさせていた。 その内刀を抜き出すかも知れない。 沖田からすれば新しいスリリングな遊びが増えたのだ。 楽しくない訳が無い。 銀時は沖田と別れた後団子屋に寄り適当に流行の商品を買う。 そしてダラダラと川原沿いを原付で走る事数十分。 を見つけた。 なんの工夫もなく本当にゴロ寝している。 銀時は原付を止め川原に降りの頭の上に立つ。 「・・・・誰に断ってそこに立ってんだよ」 瞼すら上げずは不機嫌な声を出すが銀時は気にせずそのまましゃがんでの顔の上に団子の箱を乗せた。 「寂しい女だなぁ、非番の日にこんな所で昼寝なんてしてんじゃねーよ。しょーがないから銀さんがお団子奢ってやろう」 「食べるとエロくなるからいらねーよ」 「ならねぇよ。いや待てよ。寧ろなってもいいんじゃね?」 は箱が落ちるのも気にせず横を向く。 案の定箱はゴト、と地面に落ちた。 やっと瞼を上げると包装紙が見える。 「・・・・コレ、高級品じゃん。なに泥棒?逮捕されたいなら屯所に行けよ」 「お前さぁ、ホント可愛くねぇよな。そんなんで大丈夫なのかオイ」 の背中側に銀時は移動して腰を下ろす。 「真選組ん中でそんなモン必要ねぇよ」 切って切られて生きて死んで。 身体に染み付くのは血生臭でありこんな甘い香りではない。 「あーそうかよ」 「そんなに可愛い女が欲しけりゃキャバクラでも行けよ。天パだろうがポークビッツだろうが糖尿だろうがゴリラだろうがモテるだろ」 ボリボリと銀時は頭を掻く。 を通り越した腕は団子の箱を掴み中身を開封する。 ツヤツヤのみたらし団子。 その一本を食す。 「騙されたと思って食ってみろって、マジで美味いから」 背中をしつこく突きながら銀時が「なぁオイって」と言うのではようやく起き上がった。 「ホラよ」 差し出された団子は残り一本。 「テメェ殆ど自分で食ってるじゃん」 「残り物には福があるっつーだろ」 は串を取りモグモグと食べ出す。 確かに有名な高級品だけあって美味い。 けれどそれを口に出すのは釈然としなかったので結局最後まで無言で食べた。 串を箱に投げ入れまた仰向けで寝転がる。 「ちょいとそこのお嬢さん、蜜付いてるんですけど」 そう言って銀時はにキスをする。 「ホラ見ろ。福があっただろが」 得意げに微笑む銀時に向かっては懇親の力を込めて頭突きをした。
18-07.2006 ⇒ |