「休暇ください」


山崎はこの日、近藤に土下座をした。


「二日とか言いません。二十四時間でいいんでお願いします局長」


畳みに額をぴったりとくっつけ懇願する。

土方と沖田はこの場に居ない。

いたら絶対邪魔されるからである。

近藤は迷う事無くあっさりと「いいぞ」と言った。

ので山崎は早速私服に着替えて仕事用の携帯電話を置いて屯所を後にした。




(これで今日一日は邪魔されないな)


との待ち合わせ時間より少し早く着く様に出たにも関わらずはもう既に居た。

「早くない?」

「今日はなんとなく。退こそ早いよね」

「あー、うん」

内心、自分が早く出たのをどこかで感じて早く来てくれたのかな、などと物凄くポジティブに山崎は考えた。

「なに笑ってるのよ」

お陰で顔が緩む。

「なんでもないなんでもない!」



は老舗の呉服屋に住み込みで働いている。

以前山崎が密偵の為呉服屋で張り込みをしていた縁で知り合い今こういった仲になった。

(仕事ん時は毎日会ってたなぁ、そう言えば)

隣に座って映画を観ているを見た。

自分が真撰組だと言っても「お仕事大変ですね」とのんびり切り返した瞬間山崎の心は跳ねた。

いつもいつもそれこそいつも近藤始め土方や沖田という問題児と過ごしているせいか安らぎに飢えていた。

職務中にも関わらずの雰囲気に癒された。

映画の途中だが山崎はの手を握る。

気付いたが少し照れたように山崎を見て微笑んだ。

が。

そんな幸せな時間も長くは続かず。

映画館を出ると出入り口に止まっているパトカー。


「なんでィ山崎じゃねーか」

「仕事サボって何してんだテメェ」


二人の周りには何人か倒れていた。

(騒ぐんなら月に行って騒いでろよ)と転がる男に尋常じゃない殺意を覚えた山崎。

「オィ、さっさと乗れ。仕事だぞ」

と土方はパトカーに乗り込む。

「彼女は俺が送ってやらァ」

「結構です」

沖田の申し出をマッハの如く山崎は断った。

「ごめん」

「ううん、平気。お仕事頑張ってきてね」

パトカーに乗った山崎にはそう言って手を振った。


あーもうこの車事故っていいよ。








26.08-2006