「あ、爪割れた・・・・」

の水色の長い爪が無残に半分折れとった。

「何したらそんな折れん?」

「うーん。いっつも気付いたら折れちゃうんだよね。おっしー爪切りある?」

「あらへん」

「だよねー。持っててもなんかキモいし」

「お前聞いといてそんなん言うなや。絶対持ってても貸さん」

「持ってないんでしょ」

「持ってへん」

「じゃあそんな無駄な事言わなくていいよ」

なんちゅー可愛くない女や。

しかも鞄漁ってるし。

なんやねん、自分持っとんのか!


「ってハサミ!?」


出てきたんは普通のハサミ。

紙切るハサミ。

は俺を無視してジャキンと爪を切りよった。



ハサミで。



「・・・・かっこええな、お前」

「はぁ?」

「俺でもハサミでは爪切らんで」

「普段は爪切りで切ってるに決まってるじゃん」

お前アホか、みたいな顔しとる。

あー、ホンマ可愛くない。

「でもなんや寂しいな」

「なにが?」

「そない綺麗に揃ってんのにこの指だけあらへんの」

「そう?」

「めっちゃ寂しいなぁ。ハミゴみたいや思わん?全部切ったれよ」

は左手を上げてバランスを見とる。

「別に」

「・・・・お前に俺の繊細な感覚を期待したんが阿呆やった」




やのに翌日、は残りの爪も全部切っとった。

「おっしーの感性を体験してみました」


何この子。

天然?

それとも狙ってんの?

「どうどう?寂しくなくなった?」

「あーもうめっちゃ腹立つ」

「なによ急に。感じ悪いなぁ」

俺の意見なんかそんな素直に聞かんでええねん。

期待するやろ。

「・・・・もうええ」

「なんかおっしー今日いつにも増して意味がわからないよ」

「俺は多分今恋する少年になりかけやねん。ほっといてんか」

「なにそれ」



振り回されるんは嫌いやねん







11-06.2006