「え、別れたの!?」 それは突然告げられた待ち望んでいた事実。 「キヨ声大きい」 隣同士だが電話越しに会話する。 「今家なんでしょ?行ってもいい?」 「駄目。来るな」 「、泣いてるの?」 その問に答えない時点で千石はが泣いていると確信した。 あっけらかんと「忍足クンと別れたよ」と言って来たがきっともう既に沢山泣いた後だったのだろう。 「ねぇ、じゃあベランダ出て来てよ」 「・・・・わかった」 は電話が切れる音はあまり好きではないのでさっさと耳から離しベランダに出る。 すると既に千石が出てきておりいきなりベランダを飛び越えてこちら側の領域に着地する。 「なっなっ!」 危ない!と怒るよりも先に千石に黙って抱きしめられては堪えていた涙をまた流す。 「だから忍足なんか止めとけって言ったのに」 普段の馬鹿みたいにテンション高くてヘラヘラしてる千石はそこにはおらず。 「キヨのアホ」 一体いつから千石は香水を付けだしたのだろう。 気付いた時にはもうこの香りは馴染みのあるもので。 いつも近くにあった。 「アホでいいよ、ホラ我慢するなって」 どちらかと言えばいつもはが千石の頭を撫でる側だった。 浮気がバレて彼女に振られて泣いた千石の。 けれども今日は逆。 この何とも言えない安心感。 「だからキヨはいっつも私に言いに来るんだ・・・・」 「なにが?」 「なんでもない」 今やっと理解出来た。 けれどその代償は大きい。 は忍足が好きだった。 好きで好きで一度の浮気も許せないぐらいに。 リビングのテーブルに置きっぱなしの携帯が鳴っているのに気付くが聞こえない振りをする。 忍足だけ着信音を変えていた事を激しく後悔するがもう遅い。 きっとキヨも気付いている。と思うが千石は相変わらず何も言わない。 電話は留守電に切り替わるまで鳴り続けた。
20-07.2006 ⇒ |